天に輝くたったひとつの月

水面に映るその月の影


月はこの世にたったひとつであるのに 

今宵も幾多の水面に月影を落とし

あたかもそこにあるかのように 

その輝きを等しく分け与えている


月は水面に写されようと輝くわけではなく

水面は月を写そうと鏡となっているわけでもない


おのおのがただその本分を全うしているだけ


水月のごとく 何処にいようとただ在るがまま

無我の本分に還ろうとするならば 

天より吉祥を告げる瑞鳥現る




今この瞬間、その様を見た貴方の心の中には

この水月のごとく無我の静けさがあったことに気づけただろうか?

どうか、その静かな心の空白が

いかなる時にも胸の内にあることを忘れないでほしい

たとえ揺れていても、波立っていても、溺れそうに荒れていても

輝く水面の月影を辿って 瑞鳥が舞うこの場所に還ってきてほしい


水月飛天夜話

suigetsuhitenyawa    2020.7

レジン

size: 600×300


純銀箔粉で着色を施した美しい瑞鳥と水面に映る月影を描いた作品。

金属粉ならではの独特の細かい輝きが目を引きます。

メインモチーフの瑞鳥だけでなく、背景も60×30cmの大きさで厚さ3ミリの薄いレジン板に仕上げ、平面と半立体を融合しすべてレジンのみで仕上げた初の作品となります。

背景はレジンを何層も重ねながら着色することで遠近感も感じさせ、月は蓄光となっているため暗闇の中でほのかに光る月夜をしばし堪能することができます。

<純銀箔粉について>

アートで金銀箔を使うことは珍しいことではなく、一般的な形状の極薄紙状のものやフレーク状のものを貼ったり散りばめたりした作品は多くあります。

智明葵の作品は純銀箔をパウダー状まで細かくしたものをパステル画のように使うという使い方で独特の輝きを表現しています。

今回使用した純銀箔は、京都の製箔所で手打ちした銀箔を酸化変色しにくいコーティングと着色を施したもので、このような加工を施した銀箔は世界で日本にしかみられないと聞きます。
奈良·平安時代から芸術に用いられ、その後は美術品や建建築物に使われてきた金銀箔ですが江戸時代になると金銀箔は幕府の統制下に置かれ箔屋数は衰退。

さらに第二次世界大戦時は金製品が没収された話は知られていますが、金箔の製造販売使用も例外ではなく政府の統制下になり、その中で銀箔を金色に着色する技術が生まれました。

今は当たり前に目にして手にすることができる金銀箔も、こうした日本の歴史に翻弄されながらも脈々と続けられ、伝統と新しい技術を融合して提供されているものなのです。
参考:山村製箔所HP


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